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当初スタッフとの皆様との会議では、音楽の中に”歌”が入る予定はありませんでした。

しかし、原作、脚本を読み、そして片山監督チームの描く映像を目にしながら劇伴作りを進めていく中で、

”歌を書きたい。”という衝動を抑えられませんでした。

というより、自然にもう書き始めていたような気がします。

本編には、インスト(＝楽器)だけのメインテーマ曲というものが別に存在します。

そしてサブテーマ曲として

歌があるイメージではないということを承知しながらも、

一案として、でも提案すらしないのは絶対に後悔すると思い、

仮歌の時点で佐藤玖美にお願いし、

歌のある曲も、ダメもとで提案させていただきました。

それが薄明でした。

片山監督からいただいたコメントをご紹介させていただきます。

『ドラマ、さまよう刃のエンディング曲を決めるとき、当初は歌ありではありませんでした。
しかし高位さんが歌詞をつけ、佐藤さんが歌うことによってより物語が鮮明になり、フォーカスがあっていく感覚を覚えました。
是非エンディング曲にということになり、沢山のスタッフの後推しもあり決定しました。
「薄明」のおかげでドラマの世界観がさらに広がりました。』

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「さまよう刃」という作品が、

人を裁くのは＿＿＿と大きな問いかけやその他いくつもの答えのない問題を提示するように、

この歌詞の中にも答えはありません。

ただ、歌うという行為に、神聖さやありのままであることの許容、祈りを感じる瞬間はいままであり、自分自身それに触れて救われたこともあります。歌ってもらうなら佐藤玖美以外有り得ませんでした。彼女の歌声がそれを含んでいて体現してくれると信じていました。

長年の信頼関係があった彼女の存在により書き上げることができ、

登場人物達の叫びだけでなく

”名も無き罪を背負う”誰かの無常への祈りを込めた楽曲となりました。

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言葉にするのが難しいのですが、

私の作曲スタイルでは、沼に入ってから、境地に達するまで、

何のために流しているわけでもなく呼吸のように涙が流れ続けたりします。それはいい兆候で、その感覚が今回は凄まじかったです。

25年音楽をやっていてもまだまだ業界では未熟者ですが、

沼の先でそれだけ振り絞ることが出来る作品と巡り会えるのは恐らく稀でしょう。

映画「岬の兄妹」でご一緒させていただき、実はそれより前から色々な作品でお世話になっている、片山慎三監督のパワーが漲ったこの作品が多くの人に届くこと、本当に幸せです。

そして佐藤玖美について。

"孤独な闇と闘い続ける人へ”

彼女が掲げるアーティスト像と表現には

このようなテーマがこめられています。

彼女とは大学生の頃からの友人で、長年一緒に音楽活動をし切磋琢磨してきました。出会った時から歌詞の才能が凄く何度もアドバイスを貰い、私が歌詞を書けるようになったのは玖美のおかげです。

そして、薄明を歌ってもらうところからMVにするまで、作品の世界を表現しようとしてくれる深い理解力や行動力が本当に心強かった、濃いパートナーです。

2人でまた音楽発信をしようと、今年再スタートを切れて嬉しく思います。

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劇伴を書いて演奏している人が、

勝手に作詞作曲までしてしまう…?!という例は

もしかしたらドラマ史でないかもしれません。

最後になりましたが、

そんな異例のことを積極的に受け止めてくださった、さまよう刃の素晴らしいスタッフの皆様、

MV作りの関係者の皆様、

佐藤玖美や私の作る音楽を聴いて応援してくださっている皆様、

本当にありがとうございます。

ドラマも曲も、是非お楽しみ下さい。

これからもよろしくお願いいたします。

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連続ドラマW 東野圭吾「さまよう刃」

WOWOW開局30周年記念。犯罪小説史に残る、東野圭吾、170万部超えの問題作を連続ドラマ化。彼の行動は是か非か。すべての者に突き付けられる、現代日本の罪と罰。
2021年5月15日から毎週午後10時、WOWOWプライム・WOWOWオンデマンドで放送・配信開始。

▷　https://www.wowow.co.jp/drama/original/samayou/

※なお、第五話はサッカー中継のため6月12日の放送はお休みし、
6月19日土曜日、夜10時より放送いたします。

2021.05

「薄明」が生まれた経緯と想い 〜さまよう刃 エンディングテーマ曲〜

「薄明」が生まれた経緯と想い　〜さまよう刃　エンディングテーマ曲〜