清明

不思議なことがありました。

また新しいパターン。


押し殺す必要も、誇張する寄り道の必要もない、

危うい、怖い、 と思う風景も、 きっとこれからは隠さない。


数日間、

瞼の裏側でしか見えない、

写真のような、絵のような、アニメの一コマのような、

人のいない遺影のような、

悲しい印象ばかり残る風景がありました。

記憶ではない何かが作り出した風景。

なんども見る幻影。

それが、今夜、現実に見えたのです。

帰り道、


サッ


とそれは目の前に現れました。

これが、それだ。

瞼の中ではもやもやだった輪郭がはっきりして。

なんどもも見ているのに、見たことがなかった景色は、これだ。



風の音が、

ワーーーーー ッッ

小さい頃から時々、体が衰弱したり、精神が破壊しかけると、

まわりの全てのものが、エアコンが、風が、壁が、袋が、自分の肌が、髪の毛が、外の空気が、

一斉にワーーーーーーーーーーーッ

と叫んでいるように聞こえる状態に陥りました。

耳鳴りっていうのかな。

耳元でサラウンドで叫びをあげている。


でも今日はそれと違う感覚でした。

おいで。

ここにいたよ。

その景色が悲しげに歌っていました。

確かにその景色はずっと前からそこにありました。

夜の空気と小雨と時間と、それから私の心の変化、すべての条件が整って

その景色に出会えたのでした。


人間は多少の予知能力が備わっているというか学び得ているけれど、

それを少しだけ超えたことがたまーに起こります。

ひとつなにかがずれたら、きっと違う世界。

出会えた世界を、見逃さない。





音楽を教えてくれ心を豊かにしてくれた人達にどう恩返しするか焦ってばかりいました。


でもきっとその答えはただ生きていくことにすぎない。


わかっていながら誰かに気づかせてもらわなければならないことに、やっと出会えた日。


光を自分で閉ざすのは、眩しくてたまらない時だけにします。




Hiyoko Takai

Composer, SoundArtist, Pianist

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